ほんのりへそ曲がり

「アイドルは楽曲だ」という信条のもと、楽曲を中心にV6と関ジャニ∞を語る

『カノトイハナサガモノラ』 8/3 昼 東京グローブ座(ネタばれあり)~「トニセン」というもの

ネタばれ回避の段下げのついでに身の上話を。

 

前回『TWENTIETH TRIANGLE TOUR』第一弾『戸惑いの惑星』を観たのは、2017年2月、抗がん剤治療6クールのうち5クールをやっと終えた直後でした。

髪も眉毛もまつ毛も全抜けしていたのでウィッグつけて眉毛は完全に手書き(だから形がちょっと変)、体重15キロ減。そんな姿で劇場に現れたもんで、いつも冷静な友人に「一瞬誰だかわからなかった」と驚かれたものです。

 

あの寒い冬から2年半。

この猛暑にも耐えうる気力と体力を取り戻し、第二弾を迎えることが出来ました。

感慨深いものがあります。

 

 

 

「いつまでここにいるつもりだい!?」

芝居本編中、本人たちにもファンにも耳の痛い台詞を投げかけられた時には、ちょっと苦笑いしてしまった。

 

そうねえ、ファンから見たら“カッコいいおじさん”でも、世間的には「このおっさんら40過ぎていつまでアイドルやってる気?」ってなものだよねえ。

 

 でも多分、いつまででもいると思う。求めてられているうちは。

  

求められているうちは、求められている姿を、きちんと見せてくれる。

 

そして引く時は、みんなが納得する形で、きれいに引いてくれるだろう。

……って引く話今するな(笑)。

 

 

でも今、もし万が一、『TTT』はこれで終わり、って言われても納得しちゃうような、今の“20thCentury”*1が完璧にパッケージングされている作品だった。

 

 

ファンが求めている、アイドル としてのトニセン。

『カノトイハナサガモノラ』の中にだけ存在する、サカモト、ナガノ、イノハラとしてのトニセン(実は「ソウルステーション」という場所にいる魂、という設定)。

前者はノンフィクション、後者はフィクション。

そのフィクションとノンフィクションの絡み合い具合が、実に絶妙。

 

それを最も感じたのが、アンコールの場面である。

 

アンコールを受けて出て来た3人、「今日はいかがでしたか?楽しんでいただけましたでしょうか」と、いつものトニセンのコンサートのようなフリートークを始める。

実際ここはフリートークなのだと思うが、終盤になるとイノッチが坂本さんに「リーダー、今日はどうだった」と振る。

それに坂本さん、「今日も調子良かったよ。昨日も。多分明日も」とこんな返事を返す。

実はこれ、本編に出て来る台詞。

 

本編のサカモト、ナガノ、イノハラ、からアンコールで“いつものトニセン”に戻った、と思いきや、まだ『カノトイハナサガモノラ』の世界は終わっていないのだ。

 

そして最後の曲、『カノトイハナサガモノラ』を歌い、歌い終わると、両袖からバンドメンバーが顔を出す。そしてこんな台詞を言う。

「ラーメンの王道はとんこつだと思うよ」

「いつまでここにいるつもりだい!?」

これも本編中の台詞。

これで舞台本編は本当の終幕を迎える。

 

そしてもう一度アンコール、揃って出て来て挨拶、客席に手を振って去っていったのは、“いつものトニセン”としての3人だった。

 

フィクションとノンフィクションが交錯する、不思議な後味の終わり方だった。

いわゆる「トニコン」では味わえない味だ。

 

さらにもう一つ、劇中には坂本昌行、長野博、井ノ原快彦、という個人の素の部分も、きちんと織り込まれている。

 

長野くんお約束のグルメ話*2、それに“子どもの頃のイノハラ”。

 

 イノハラが子どもの頃の自分(人形)と対話をするシーンがあるのだが、ここで歌われるのが『遠いところまで』。

そこで気がつく、この人形は“子どもの頃のイノハラ”であると同時に、現実のイノッチの子どもでもあるのだと。

(このシーンの描き方が実に繊細で巧みで、個人的には一番感動したシーンだった。また坂本・長野両者の人形の操り方が上手くて・・・・・・)

 

 

終幕後、グローブ座を出て、ふと考える。

トニセン、魂の3人、坂本・長野・井ノ原個人。

これはフィクション?ノンフィクション?

いや、フィクションとかノンフィクションとかではなくて、全部ひっくるめて「トニセン」なのだと。

アイドル、役者、社会人。

こういう世界観を全て、違和感なくバランス良く持っているのが、「トニセン」というグループなのだ、と思った。

 

 

トニセンのバランス感覚の良さの秘密は、「必ず“第三者の視点”を入れる」と いう点にあるのではないだろうか。

 

2000年前半に上演された、後に『トニセン三部作』と呼ばれる舞台*3でも、タッグを組んだのは『劇団扉座』の主宰で脚本家・演出家の横内謙介氏だ。

2016年に『TTT』の企画が発表になった時も、脚本・演出は劇作家のG2氏だと知り、ああトニセンらしいな、と思った。

 

トニセンは、舞台に立つ時は、自作自演をしない。

コンサートは自分たちで作・演出をするけれど、3人で舞台に立つ時は必ず“舞台のプロ”と組む。

ファンが望む志向や、自分たちの希望だけではない、“第三者の視点”がここで生まれる。

それがバランス感覚の良さにつながっているのではないか、と思うのだ。

 

 

今回の作・演出の御徒町凧さんは、基本的に詩人で、横内氏やG2氏とはまたちょっと違う“プロ”だけれども*4でもやはり“第三者の視点”でトニセンを見て、描いてくれている。

 

まあこれは個人的な感想だけれども、御徒町さんと相性いいんだろうな~。

だから「トニセンという世界観の完全パッケージングに成功」なんて感想が出て来てしまうんだろうな。

 

 

円盤化を切に願う。

いつも言っているけど、今回は本当に切に。

「いい年してアイドルなんて、この人たち何やってるの?」でもいい、少しでもトニセンに興味を持っている人たちに、この作品を見て欲しい。

これが、トニセンそのものだと。

少なくとも私は、自信を持ってそう言い切れる。

 

 

 

 

 

 

とか言ってますが、『TTT』第三弾も 観たいです。

 

前回『戸惑いの惑星』感想で「トニセンは稀有なグループ」とか書いてますけど、確かに稀有なグループですけど、それより何より舞台演劇もジャニーズも両方好きな私にとって、役者とアイドルの顔を完璧に使い分けるトニセンというグループは、「私にとって」奇跡に近い存在なんです。究極の私得です。

まだまだ存在し続けていて欲しいよ。

これがファンの(というか私の)大本音。

 

 

*1:これが正式名称です。「トニセン」は愛称だけど略称です。「トニセンです!」とまるでこれが正式のグループ名であるように紹介した『はしご酒』での扱いを、私はちょっと根に持っています。

*2:アンコールでの「ラーメンの王道はとんこつ」という台詞は、劇中の「ラーメンの王道はしょうゆだと思っているんだけど」というナガノの台詞に掛けたもの

*3:2000年『東京サンダンス~俺たちの20世紀~』、2002年『とんかつロック』、2004年『SAY YOU KIDS』。

*4:でも森山直太朗さん以外の舞台の作演出もされているんですね、パンフレット読んで初めて知りました。