ほんのりへそ曲がり

「アイドルは楽曲だ」という信条のもと、楽曲を中心にV6と関ジャニ∞を語る

“かつての日常”と“新しい日常”のはざまに~『It's my life/PINEAPPLE』感想・1

 

『It's my life』を初めて聞いたのは『特捜9』のエンディング、もしくは公式YouTubeだったと記憶している。

時は2020年4月。緊急事態宣言発令中の折り。

既に「乗り過ごした駅で とりあえずビール流し込んで 隣の客とはにかん」だり、「ストレスフリーに街繰り出」すことが「ありふれた毎日」ではなくなっている時期だ。

 

時流からずれた格好になってしまったが、しかしそこは勤続25年の男たちと、それを支え続けたスタッフ陣、どう転んでもただでは起きない。

 両A面のもう1曲に、離れていても想い合うまさに"今"のラブソング、『PINEAPPLE』を持ってきたのだ。

 

だがしかし、この両A面シングルが発売されたのは、緊急事態宣言が解除された5月から4ヶ月経ち、"新しい日常"が「ありふれた毎日」になりつつある9月だった。

 

感染症対策さえしっかりすれば「タイムリーな映画を観る」ことも出来るが、離れた国に住む(歌詞の描写からそう読める)画面越しの恋人たちは、いったいいつ触れ合えることができるのかまだわからない。

 

“かつての日常”と“新しい日常”のはざま。

“新しい日常”がこのまま根付くのか、“かつての日常”が完全に戻ってくるのかまだ判然としない、微妙なタイミングに発表された、この2曲。

 

だけど、揺れ動く不安な時流の中でも、

 「どんな瞬間(とき)も It's my life」だよ、と。

どんな時でも、どんな状況でも自分らしく前に進もうと、V6兄さんたちは変わらず軽快に私たちを励ましてくれるのだ。

ああ頼もしや勤続25年の男たち。

(このキャッチコピー本当に秀逸)

 

 

という訳で各曲のもろもろを。

 

 

■『It's my life』

 

明るくあたたかい応援歌に、ぽつりと落とされる深いフレーズ。

「落としてきたものと 拾い集めたもの」

ここをイノッチのソロにしたのはずるいわ。

 

イノッチの声質はとてもいい。

低音だけど暗くない、耳に優しい声。だけど不思議と、聞くと「あ、イノッチだ」とわかる特徴もある。

彼の存在がお茶の間に浸透した要因の一つにこの声質の良さがある、と私は思っているが、その魅力が最も発揮されるのが「歌」ではないかと思う。

 

デビュー当時から歌は上手い方だったけれど、年齢を重ねるにつれて表現力の幅が広がり、“深み”が増してきているような気がする*1

 

その声でふっと「落としてきたものと 拾い集めたもの」なんて歌われてしまうと…落としてきたものはたくさんある、けど拾い集められたものはあまり無い中年の心に、じわっと沁みるものがありますわ…。

 

曲調がミドルテンポなのも良い。

気分が沈みがちな昨今、気持ちを上げるためにアゲアゲの元気ソングを聴いたり、ドラマティックなバラードに浸ってちょっと現実逃避してみたりしてきた。

そういう感情を大きく揺さぶられる曲に、ちょっと疲れちゃったかな、というところで、ゆったりめのテンポの『It's my life』。

聴くとほっとひと息つけます。

個人的には発売のタイミング、絶妙だったかも。

 

 

 ■『PINEAPPLE』

 

楽曲の舞台は暗い夜の部屋。

恋人がいる画面の向こうは朝日とパイナップル、こちらは「雨の夜」。

最初のワンフレーズのこの対比で、情景がすぐに思い描ける。 

 

画面を消し、さらに暗さを増した部屋の中で、ひとり恋人を想う。

 

その情景に合わせて曲調もトーン暗め。

だけどその“暗さ”は、単純に離ればなれの不安を感じるような暗さではなく、想いの深さを象徴するような、濃厚な闇。

 

この楽曲を単なる“暗い曲”に終わらせず、想いの深さを伝える歌とダンスはまさに完熟したパイナップルのよう。

豊潤な味を感じさせてくれる。

 

 

今回のMVはダンスシーンのみで、個人的には非常に良かったと思う。

『All For You』の時も『Right Now』の時も、「イメージシーンもカッコいいけど、ダンスを全部見せてよ~」と思っていたので。

けど、衣装が全員白ブラウスの『CDTV』の方がより好みかも。

しかもフルバージョンですよ。

 

このブログで恐らく何度も言っていると思いますが、V6のダンスは動きがとにかくエレガント、フォーメーション移動も無駄がなく綺麗。

それを充分に見せるにはカメラはとにかく引きでお願いします、なんならアップとかいらないから。と常々思っているのですが。

 

 今回は1人をズームアップする時も、完全に1人だけ「抜く」のではなく寄りながら広角で撮っているので、周囲のメンバーの動きもちゃんと映り込んでいる。

上手い撮り方。ドローンカメラとか使っているのかな?

 

とにかくこのダンスの見せたいところ*2をあまさず映していた。さすがご縁の深いTBS様、V6の魅力をよくわかってらっしゃる。

 

なんならMVより『CDTV』の方がリピートしてるかも。

MVは岡田の柄シャツと坂本さんのジャケットがちょっと笑えるので(笑)。

坂本さんのジャケット、『way of life』MVの謎のトレンチコートを思い出させる。何で上着着せられがちなんだろう。痩せてるから?

 

 

楽曲の話にちょっと戻ります。

前作『ある日願いが叶ったんだ』のカップリング『Sweet Bitter Rain』といい、昨今「雨」の歌が多いV6兄さん。

「雨」の歌にはバックに、雨をイメージさせる一定のリズムが刻まれる音が入っている、と『関ジャム』で習いましたが、今作でもそういうアレンジがされています。

 

Aメロとサビではドラムのスネアの音、Bメロ「離ればなれでも…」では鍵盤音、とパートによって楽器が変わっているようですが、特に印象的なのはイントロ、Bメロ、そして曲を締めるアウトロで和音を刻んでいる鍵盤音。

 

1音1音、刻むたびにふわっと広がるように響いて、雨粒がぽつんと落ちて波紋が広がるようなイメージが浮かぶんです。

それが夜、ひとり薄闇の中で恋人を想う、という世界観をより深くしているような気がします。

 

 

 

 

いつものごとく長くなりましたので、カップリング2曲はまた次項。

今回はカップリング曲に対して、個人的なびっくりもあったので。

 

*1:『Music Day』のメドレー時、自前の衣装で「マッチでーす!」とかやる人だけど。そういうところは全然変わらないけど。

*2:健ちゃんが手でメンバー跳ね飛ばす?とことか。あそこは健メインだから健だけを抜きがちだけど、健を中心に周りの動きを見せるのがキモなところだから。